日本維新の会
前川きよしげより 「大切なご報告」
2023年(令和5年)9月27日
拝啓
時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
いつまでも残暑が続いておりますが、お変わりございませんか。
さて、公職選挙法違反事件に関してご心配をおかけしており、誠に申し訳ございません。
事案の内容とこれまでの経緯、そして今後の対応をご報告させて頂きますので、
長文ですがごー読を賜れば幸甚に存じます。
起訴の内容
私は、2021年の衆議院選挙前、奈良市に住む関西大学卒業生らに対して、下記の通りポスターを貼って頂けませんか、ボランティアとして手伝って頂けませんか、選挙資金をカンパして頂けませんかなどのお願い文を郵送しました。【図1】
併せて、選挙ハガキの宛名書きをお願いしました。【図2】
この郵送が公職選挙法の禁止する「事前運動」に該当するとして立件されてしまいましたが、公職選挙法第129条は「選挙運動は、届出のあった日から当該選挙の期日の前日まででなければ、することができない。」と規定しているのみで、「選挙運動」とは何かを定めていません。したがって、公職選挙法には、事前運動として何を禁止するか、書かれていません。他方、憲法第21条は「表現の自由」を保障しており、政治活動の自由も基本的人権として保障されています。それ故に、公職選挙法が禁止するのは届出前の「投票依頼」であって、届出前であったとしても政治活動や選挙の準備行為は禁止されていない、その自由を憲法が保障していると解されています(ですから、立候補しようとする者は届出前でも街頭演説したり、政策ビラを配ったりしています)。
その上で、私が郵送したお願い文ですが、ご覧頂ければ明らかな通り、「私へ投票して下さい。」と投票依頼した訳ではありません。ポスターを貼って頂けませんかなど政治活動や選挙の準備に関する協力依頼です。
選挙ハガキに関しても、公示後は公職選挙法に定められた「本番ハガキ」として郵送されますので「選挙区は前川、比例区は維新」などの文言が印刷されていますが、同封した「選挙ハガキご協力のお願い」や返信用封筒とセットで読めば(同封した3点セットに目を通したならば)、投票依頼ではなく、選挙ハガキの宛名書きのお願いであることも明らかです。
もちろん、私には「投票依頼」のつもりは全くありませんでした。
選挙の準備行為
衆議院選挙の場合、選挙ハガキを55,000枚発送することができますが、公示後に用意しても、55,000枚もの選挙ハガキを集めることは不可能です。
また衆議院選挙の場合、公営掲示板のほかに1,000ヶ所、候補者の顔と名前を印刷したポスターを貼ることができますが、公示後にお願いを始めても1,000ヶ所ものポスター掲示場所を確保することはできません。
そこで、私に限らず、どの候補者も、公示前に選挙ハガキの宛名書きや、ポスター掲示場所を提供して頂くようお願いしています。ボランティアやカンパのお願いもしています。これらのお願いは投票依頼ではなく、「選挙の準備行為」に関する協力依頼だからです。奈良地裁にも、馬淵澄夫議員や、高市早苗議員、小川淳也議員(香川1区)、猪奥美里候補らが同様のお願いをしていた証拠(お願い文や選挙ハガキの用紙)が提出されました。【図3】
奈良1区には、私のほか、馬淵議員、小林茂樹議員が立候補しましたが、検察側の証人として出廷した大川昌之氏も、私だけでなく、馬淵議員からも、小林議員からも同様に選挙ハガキのお願い文が届いたと証言しました。
したがって、選挙に先立ってどの候補者も当たり前にやっている協力依頼を私も行ったに過ぎず、私だけが何か「特別なこと」や「ズルいこと」をやった訳では決してありません。
支援を期待できる人たち
それにもかかわらず、一審の奈良地裁は支援を期待できない人たちに対する協力依頼は「投票を呼びかけるのと同様の効果を目的としたもの」であるところ、私にとって関大卒業生は支援を期待できる人たちとは言えない、だから、私からのポスターを貼って下さいなどのお願いは事前運動だと判示しました。大阪高裁も同様です。
しかし、私はこの認定に驚きましたし、到底承服することができません。と言うのも、私は関大卒業生たちと長年、様々な場面で親しく交際し、党派を超えたご支援を頂いていたからです。
私は、縁も無なければ、お付き合いも無い、例えば東大や近大の卒業生名簿をもらってきて、いきなり郵送した訳ではありません。ご案内の通り私は関大一高、関大を卒業しています。関大法学部の非常勤講師や司法試験受験研究会の講師も務めました。また奈良県における関大の同窓会である「奈良県関大倶楽部」の顧問を20年以上続けています。毎年秋に開催される奈良県関大倶楽部の総会には毎回、100人以上の関大卒業生が出席しますが、私はほぼ毎回参加して、スピーチの時間を頂戴するとともに、出席した関大卒業生らに名刺を手渡し、言葉を交わして、懇親を重ねて参りました。奈良県関大倶楽部に限らず、関大橿原倶楽部や関大校友会高田支部、関大一高奈良倶楽部など、奈良県内の様々な関大同窓会の行事、懇親会などにも可能な限り参加していました。私が関大同窓会の行事や懇親会などに出席した回数は、2003年(私が初めて参議院選挙に立候補した年の前年)から、2019年(新型コロナの感染拡大で各種行事が中止になる前)までの17年間だけで、記録が残る限りでも合計99回を数えます。個人的にも数え切れない関大卒業生と親しく交際し、また弁護士としても大勢の関大卒業生から事件処理の依頼を受けて参りました。
名簿を耕す
2004年、私は、政治活動をスタートすると同時に「前川きよしげを支える関大有志の会」という後援会を設立するとともに、節日節目には奈良県に住む関大卒業生へ政策ビラやリーフレット、講演会や「座談会」の案内などを郵送して、私の政策を訴えていました。これら郵送において亡くなったとか、転居されたと判明した方や、「もう送ってくるな。」と連絡を頂いた方については、その後は政策ビラも案内も郵送しておりません。選挙の時には、選挙事務所から電話をかけて、支援のお願いもしていましたが、その際の反応がよくない方(他の候補者を支援するなど、私への支援が期待できない方)については、その後の郵送や電話かけを止めました。政治活動の実務においては、平素から政策ビラを郵送するなどして政治活動への理解や支援を求めることを「名簿を耕す」とか「名簿を培う」と呼んでいます。そして、耕し、培った名簿に基づいて選挙の準備行為について協力を求めることは事前運動ではないと扱われてきました。土肥孝治元検事総長(私が奈良地検で司法修習した際の検事正)に相談に伺った際、土肥元検事総長からもそう伺いました。私の場合もまさに培った名簿に基づくお願い文の郵送であり、これまでの実務では事前運動ではないと解釈されていたはずです。
実際に支援を受ける
このように会合などへの出席や政策ビラなどの郵送によって、関大卒業生の間にも私に対する支援の輪が徐々に広がり、実際のところ、歴代の関大校友会長や関大理事長、奈良県関大倶楽部会長をはじめ、選挙の時も、日常活動でも、数多くの関大卒業生から党派を超えたご支援を頂いておりました。
関大校友会
加えて、選挙前、関大校友会から私宛に選挙事務所に掲げるための「祈必勝の為書き」も届いています。この為書きを見た私が「関大校友会も応援してくれている。」と期待するのは当然ではないでしょうか。
関大校友会の田中義信会長は、奈良地裁の法廷で、この為書きには「校友として応援したいという気持ちは込められています。」と証言しています。田中会長は「我々校友会としても、関大卒業生の政治家が特に国政とかで活動されることは非常にうれしいことです。」、「我々にとっても素直に応援したいという気持ちはあります。」、田中会長個人としても私を応援する気持ちについて「あります。」、他の関大卒業生についても「応援する関大卒業生は一定数はいると思いますね。」などと証言しています。
このように応援したい気持ちを持って頂いており、しかも、これまでも様々なご支援を頂いた方々に対して、選挙ハガキやポスター、ボランティア、カンパなどのお願いをすることは、私たち政治家の側からすれば当たり前のことです。
衆議院法制局や京大教授らも「無罪」と断言
実は、起訴前、捜査段階で私が依頼していた弁護士を通じて奈良地検の三輪能尚検事から「衆議院議員を辞職したなら、起訴しない。」と「取引」の打診がありました。私はその報告を聞いて、「起訴されて、ご支援頂く皆様や日本維新の会にご心配やご迷惑をおかけしてしまうのであれば潔く辞めよう。」と思いました。私は自らの欲得のために政治家を志した訳ではありません。2004年、「サラ金の金利を引き下げて、多重債務に苦しむ人たちを減らしたい。」と思って政治の世界へ飛び込んだように、公に尽くしたいと願って、衆議院議員に当選しました。ですから、衆議院議員の地位にしがみつきたくはないとも思いました。
それでも、辞職する前にこの事案に対する「正解」を知りたいと思い、衆議院法制局に相談をしましたところ、衆議院法制局からは「本件は選挙運動の準備行為であって、公職選挙法違反に該当する事前運動には、該当 しない。」、「特定の人物だけを狙い撃ちにして捜査するというのでは、恣意的な捜査権の行使と言わざるをえない。」との回答が届きました。
京都大学大学院法学研究科の毛利透教授(憲法・選挙法)も意見書の中で「(奈良県警、奈良地検において)非常に恣意的で、大変スキャンダラスな線引きが行われている。」、「公職選挙法の事前運動禁止を合憲的に適用しようとするかぎり、前川氏は必ず無罪とされなければならない。」と述べておられます。さらに上告審には、中央大学法学部教授や元自治省選挙部長からも意見書が提出される予定です。
以上の通りですので、私は無罪を確信しておりましたし、奈良地裁、大阪高裁の判決に到底納得することはできません。よって、最高裁に対して上告致しました。
議員辞職
他方、奈良地裁に続き、控訴審の大阪高裁も公職選挙法違反と判示し、罰金30万円の支払いを命じた事実を厳粛に受け止めなければならないと思っています。また私が今お預かりしている衆議院の議席は、私個人の議席ではありません。日本維新の会の公認候補として立候補し、日本維新の会の近畿比例の枠内で当選させて頂きましたところ、早期の解散もまだくすぶっています。私は自民党政治の全てを否定する訳ではありませんが、自民党しか選択肢のない政治状況を変えなければならないと思って、民主党、日本維新の会に参加しました。自民党だけが政権にあり続けるため、政官業の癒着が生まれ、恵まれた人たちの既得権が守られ、改革が先送りされて、普通に暮らす人たちが豊かになれません。次の総選挙で日本維新の会はさらに躍進し、やがて自民党に代わる「受け皿」になるべきところ、私が日本維新の会奈良1区支部長に留まり続けることで、奈良1区における選挙準備が遅れてはなりません。
つきましては、大変無念ですが、最高裁の結論を待つことなく、衆議院議員を辞職させて頂く決意を致しました。私に期待し、ご支援頂いた皆様や2021年の衆議院選挙で私に託して頂いた62,000人もの方々には誠に申し訳ありませんが、何卒ご海容を賜りますよう、お願い申し上げます。
弁護士として
ところで、40年前、私が弁護士を志し、司法試験に挑戦した当時、司法試験には毎年25,000人が受験するものの、500人しか合格することができませんでした。合格率2パーセント、平均合格年齢29歳、「現代の科挙」と呼ばれていました。私は、子どもの頃、お世辞にも勉強が得意ではありませんでしたが、19歳、関大法学部の2年生の春に母を亡くしました。母はまだ42歳でした。私は母の命が尽きようとする時、若くして死んでしまう母の分までがんばろうと誓い、司法試験を受験しようと決意しました。その後5年間、死に物狂いで勉強して、24歳の時に合格することができました。その意味で、弁護士は亡くなった母が与えてくれた仕事であり、「天職」かも知れません。
今後は市井の一弁護士に戻ります。これから先の人生は政治家としてではなく、弁護士として、今の私と同様、理不尽に苦しむ人たちに向き合い、 寄り添うことで、たとえ小さくとも「正義」を積み重ねて参りたいと存じております。
感謝
最後になりましたが、皆様には2004年以来、約20年間に亘って、
私の政治活動にご理解、ご支援を賜りましたことに、あらためて衷心より感謝申し上げます。
見返りを求めない貴殿らの善意とボランティアにお支え頂き、
企業・団体献金を受け取ることもなく、政治資金パーティーを開催して、
お金を集めることもなく政治活動を続けることができました。
本当にありがとうございました。
皆様の善意に対してどれだけお応えすることができたのか、
このような事態に至りましたので不本意この上ありませんが、
20年間、決して私利私欲を図ることなく、利権を漁ることも一切なく、
「汚いお金」を1円たりとも受け取ることなく、浅学非才ながらも、
ひたむきに、一所懸命努力を重ねて参りました
ことに胸を張りたいと存じております。
末筆ながら、貴殿及びご家族皆様のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。
もしも私にてお役に立てることがございましたなら、
今後とも、どうぞご遠慮なく、お申し付け下さい。
20年間、誠にありがとうございました。
敬具
日本維新の会 馬場代表・藤田幹事長・山下奈良県総支部代表よりメッセージ
昨年3月、前川きよしげさんが公職選挙法違反で起訴された件では、皆様に大変ご心配ご迷惑をおかけしておりますこと、私達からもお詫びを申し上げます。
この度、前川きよしげさんから衆議院議員の職を辞したいとの申し出がありました。
前川さんは参議院議員を2期12年務め、内閣府副大臣、復興副大臣、参議院経済産業委員長を歴任する等、豊富な経験と実績を持つ、我が党にとって極めて貴重な人材であり、更なる活躍が期待されていただけに、誠に残念の極みであります。しかしながら、政治家として熟慮の上での決断との事でしたので、党としても、また共に改革に邁進する同志としても、前川さんの決断を尊重することと致しました。前川さんがご自身のことよりも、我が党を思い、ご決断頂いたことに敬意を表します。
私たちも前川さんの無罪を信じ、今後の裁判の行方を見守ることしかできませんが、前川さんが再び私たちとともに、維新の改革の実現に向けて活躍してくれることを願っています。
日本維新の会
私の前任の総支部代表である前川きよしげさんが衆議院議員を辞職すると聞きました。奈良の維新の更なる躍進の為に、国政の場から一旦身を引く、とのことでした。
前川さんは、奈良での維新の躍進に大きな役割を果たしてきました。その前川さんの辞職は私たちにとっても痛手です。4月に知事に就任した私は、国政と県政で力を合わせて、夢と希望に満ちた奈良を創って行こうと前川さんと話し合っていただけに、残念です。
再び政治の場で、国のため、ふるさと奈良のため、ともに働ける日を心から願っています。
日本維新の会 奈良県総支部 代表
京都大学法学部 毛利透教授(憲法)の「前川氏は必ず無罪」との意見書
中央大学副学長・法学部 橋本基弘教授(憲法)の「前川清成氏は無罪である」との意見書
法政大学法学部 今井猛嘉教授(刑法)の「選挙違反には該当しない」との意見書
元自治省選挙部長・元早稲田大学大学院教授 片木 淳弁護士の「大阪高裁判決は重大な誤りを犯しており、前川議員は無罪」との意見書